昨夜なんとも言えず感動を覚えたドラマに遭遇。なにげに点いていたチャンネルから始まったドキュメンタリードラマに釘付けになり、勿体無いからとDVDの録画ボタンまで押してしまった久々の心に染み入り、もう一度見てみたいと思わせる作品だった。
たまたまひとりでじっくり見れる環境に有り、気がつくと頬を熱いものが伝わったりしていたのだが、終わってみたらなんとも清々しく、そして愛おしく、もう「こんな物語をありがとう」っと呟きたくなってしまった傑作でした。
なんだか得した気分で一日を終えることが出来ました、感謝!
NHK総合テレビ ドキュメンタリードラマ『あの夏〜60年目の恋文〜』。
主役は東京に住む72歳の男と、姫路で暮らす82歳の女性。
この二人の往復書簡を基にその女性の孫娘が語りつぐドキュメンタリー。これがなんともドラマチックで、いままでのボクだったら「こんなのって有り〜?」「どこまでがフィクションなんだよ〜?」なんて猜疑心一杯で見ていたに違いないのだが、やっぱりこの歳になったからだろうか、とても素直にそしてとても愛おしくこの二人の翁の恋物語にじっと引き込まれていってしまった。
舞台は太平洋戦争末期、男は奈良の国民学校4年生(現奈良女子大学付属小学校)9歳、女は師範学校の教育実習生(教生センセイと呼んでいたらしい)19歳。この二人が戦後60年の時空を経てたぐり寄せられ、不思議な文通が始まったのである。
きっかけは男がふと見たドキュメンタリー番組内で特攻に出撃する隊員に向けた詩を読んでいる女性を見たことだった。当時は20代か30代の女性だったようなのだが、その彼女を見て男はその女性こそが60年前の教生先生に違いないと発見するのだ。そしてこの偶然の出来事から60年前の記憶が呼び戻され、自分自身の中に昭和19年の少年の想いが蘇り、淡い恋心を抱いていた教生先生になんと初めての恋文を送るのだ。
そしてそれは往復書簡へとなっていく。
(以下、NHKのHPより)
『あの昭和19年の夏……あれほどまでに恋い焦がれていた少年のいたことを、素直に受け止めていただきたいと思うのです。』(男・70歳)『この時間がいつまでも続けばいいのに、という思いに駆られ、ゆっくり、ていねいに拝読しました。60年がひといきに巻き返されて、息も詰まりそうになります。』(女・80歳)
戦時下のあの時代にありながら、どこまでも明るく、毎日少年たちと豊かで楽しく過ごそうと心がけていた彼女の想いは当時の少年たちの心にもしっかりと届き、彼女の想像以上に少年たちの心に深く刻み込まれていた。
お互いに人生の責任を全うし、60年も前の記憶を少しずつ少しづつ蘇らせ、取り交わす書簡のこれまた穏やかで健やかで、瑞々しい感情に触れ、清々しくも愛おしく言い知れぬ感動を覚えてしまいました。
手紙のやり取りをして半年ほど経ったとき、男性は「関西方面に出かける所用があり、良かったらぜひお目にかかりたい」という手紙を送る。彼女は応えに窮ししばらく返信が途絶える。やっと手紙を返すもその問いには全く触れない。そのあと何度か手紙は往復するも彼の呼びかけには応えぬまま・・・。
再度の彼の呼びかけにやっと吹っ切れ、60年ぶりの出会いにOKを出すのはおよそ3ヵ月後、そしてとうとう60年という時空を越えての出会いを果たすのだ。9歳の少年と19歳の教生先生とのままで・・・。
この間の手紙の文体が素晴らしい。日本語ってこんなに綺麗なんだ、なんて再認識させられた。電話でも、ましてやメールなどでもなく、手紙というものの有り難さ、その文体の持つ美しさを改めて感じ、そしてこの二人の想いを聞いているうちに感極まってしまった。
感動をありがとうございました。
生きること、年を重ねることの素晴らしさを教わった気がします。
歳をとるっていいことなのかも・・・? なんてことも思ってしまいました。
写真は二人の往復書簡をまとめたという1冊。
このドキュメンタリーはこれをベースに構成されているそうです。